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林蘊蓄斎の文画な日々
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藝能懇話 第20号

藝能懇話 第20号_b0081843_19453426.jpg


『藝能懇話』第20号(大阪藝能懇話会=堺市南区桃山台3-8-4豊田善敬方、二〇〇九年一一月二九日、表紙版画=田中靖治、頒価2000円)、特集「肥田皓三座談—大阪の人と本ー」。大阪の江戸から戦後にいたるサブカルチャーを幅広く蒐集研究されてきた肥田晧三先生が昭和六十三年から平成二十年にかけて大阪藝能懇話会の席上でお話になった百六十回以上の記録のなかから精選して収録したもの。大阪落語資料を中心に文芸一般が幅広く網羅されている。

肥田先生にはINAXから出た『肥田せんせいのなにわ学』(二〇〇五年)があって、これがカラー図版たっぷりで楽しく肥田せんせいの全体像が分かる編集になっているが、『藝能懇話』第20号はもっと広く文字情報として肥田せんせいの興味のありどころが見取り図のように展開されていて、大阪の底知れぬ人物群像の多様さを思い知らされる。

古本屋もしばしば登場する。山内金三郎の業績を語った回には萬字屋についてこのように書かれている。

《戦前大毎の重役で和本の古活字本収集家だった高木利太が終戦直前に亡くなり、御影の大邸宅に夫人と娘が残されます。生活のため高木家からどんどん本が売り立てられ、そのうちの嵯峨伝本『源氏物語』五十四帖を四万円で買った裏話などが横山重『書物捜索』下(角川書店・昭和五十四年)に生々しく書かれています。》

《萬字屋も高木の本を買っていて、ついにはその住居まで買ってしまいます。神戸にある有名な洋館の一つで、萬字屋が今でも住んでいます。
 萬字屋は梅新交差点の北西角の焼残りビルに神戸からやって来ました。この近くに、大きい間口で物量作戦の幸田(のち日本一交差点の南西へ)、内外、黒崎、楽譜のササヤなどがありました。萬字屋はえぇ本を扱うが高値で有名で、このあたりを方々移転した後に、大阪駅地下通路の市倉庫になっていた現在の場所へ落ち着きました。》

横山重は国文学者。慶応義塾出身で昭和十六年まで母校で教鞭を執った。《業者間では、買いっ振りは良いが、支払いはおそい、という評判のお人でした。しかし、どういうわけか、私はそんな印象は持ちませんでした》と反町茂雄『一古書肆の思い出3』(平凡社ライブラリー、一九九八年)に書かれている(なお高木利太については中山正善が《高木文庫(古地誌約三千五百)》を購入したと出ているだけのようだ)。

『藝能懇話』からもうひとつ古本屋の例を挙げる。肥田せんせいは尾張永楽屋が『古書通信』に出した目録から「一柳安次郎自筆原稿 直木三十五について」を購入した。

《尾張永楽屋とはかなり古い付き合いで、ちょっと偏屈の本屋ですが、『上方風雅信』を出した時、一冊分けてくれてと言ってきました。こんなことを言って来た古本屋ははじめの終わりです。》

《一柳安次郎は『上方』五号(昭和六年)に会心居主人の名で「思出の明治の落語家」を書いた人で、旧制市岡中学の一期生で、母校で国語教師をしました。直木三十五(本名植村宗一・明治二十四年生)は教え子だったらしいのです。》

《原稿には「舌代 一柳生」とあり、直木の没後(昭和九年没)の同窓会かクラス会に呼ばれて行った席上で話すための心覚えのようです。この「一柳生」を一柳安次郎だと推定し、しかも文中には「植村君」とあるだけで、いっぺんも直木とは書いてないのを、三十五と見抜いた古本屋の見識、眼力は並々ならぬものがあります。一柳には随筆集『漫録窓から』(大正十二年)がありますが、古書市でも滅多に出ません。》

ちなみに写真の右は『藤原せいけんの大阪』(藤白会・豊田善敬編、創元社、二〇〇五年)。豊田善敬氏の労作である。大阪資料としては欠かせないもの、と言いながらごく最近ハマビン氏に教えてもらって、探していたわけでもないが、百万遍の初日に、旧知のSさんに久し振りに会ったとき「この本は持ってるんですけど、この刷物が欲しいんです……」と示された。値段もネットで調べたときの半額ていど。宇崎純一のかなり正確な略歴ものっている。何の因果か、ここで遇ったが……買うしかないでしょう。刷物というのは梅谷紫翠の子息が資料提供をしており、出来上がったこの本を配ったときに挟み込んだものらしい。数寄者ですなあ、Sさんも。「コピーでけっこうです」というところをそのまま渡して喜んでもらった。
by sumus_co | 2009-11-12 21:02 | 古書日録
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