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薫酒入山門

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薫酒入山門_b0081843_1946167.jpg


『薫酒入山門』。久留米の有薫酒造が発行した小冊子。刊記はないが、おそらく昭和三十四年末から翌年頃の発行だろう。同酒造は「有薫」という酒場を経営しており、そこには数百枚の名札がかかっている。それは酒豪番付のようなもので、会長は爆弾三勇士の像を造った彫塑家(工芸家)の豊田勝秋。その名簿はこの小冊子にも掲載されており、「客分」の欄に、福田蘭童、川崎弘子(蘭童の妻、女優)、有馬頼義(作家)、有馬ちよ、海老原喜之助(画家)、河北倫明(美術評論家、久留米出身)……など、「教士」の欄に丸山豊(詩人)らの名前が並ぶ。

福田蘭童は尺八奏者。青木繁の息子幸彦である。蘭童の小味なエッセイ三篇(「九州気質」「父子対面」「野生の猿と蟹」)と「父・青木繁の思い出」と題した豊田勝秋との対談が収められている(すべて再録)。

「父子対面」では「けしけし祭」という青木繁を偲ぶ墓前祭に招かれたときのことを綴っている。

《今年もお祭りをして下さるというので現場へ行き、カッポ酒を歌碑のアタマからぶっかけて父のメイフクを祈った。竹の節を上手にくり抜いてあるので、沸す場合にカッポ、カッポと音を出すので、そういう名が出たのであろう。父は生前こうした風流ごとを好んでやっていたので、石になってまでもアタマから愛情のカッポ酒が注がれるわけである。》(『内外タイムス』昭和三十二年四月十四日)

この「けしけし祭りー青木繁碑前祭」は今も行なわれており今年は五十六回目だったようだ。対談によれば、蘭童の小学校入学式の日(三月三十日)に父の訃報が届いたという(歿したのは明治四十四年三月二十五日)。

《僕が父と暮したのは栃木の母の里でなんだが、母や親せきの人たちの話では亡父はよく僕をオンブして絵をかいていたということだ。そういえば僕もオンブされた記憶があるしまた僕をアヤしながら絵をかいていたようだ。時々はオシッコをかけたのも覚えている。あとで考えてみるとこのとき「わだつみのいろこの宮」を描いていたらしい。》

《母はなにしろ十七才のときに田舎から絵の勉強のために東京に出てきたほどだから、そりゃ絵は好きさ。この画塾で結局二人は知り合ったわけなんだが、二人の絵をみると色彩なんか実に良く似ているネ。それに「絵は売りものではない」といった信念も亡父の考え方に大きく影響をうけているといえるだろう》

文中、母は福田たね(野尻たね、またはタネ子、示現会に属する画家であった)、画塾は不同舎、たねは「海の幸」のモデル(一人だけ正面を向く顔)にもなったが、二人は結婚していない。「有薫」女主人(高山聰子)は蘭童の従妹とのこと。

《豊田 こんど外遊するそうだが、青木繁も外国に行かせたかった。
 福田 亡父は外遊しようしようと思いながらとうとう行けなかった。もう少し長生きして、外国にでも行ってバリバリ仕事をしたら、もっと世界的なものになっていたのではなかろうか、もっと生きてもらいたかった。》

青木は二十八歳と八ヶ月で歿した。早過ぎる晩年の作品はどれも力がなくなっているが、まだ三十にもなっていなかったのだ。たしかに外国へ渡って刺激を受ければ、もっと豊饒な仕事を残したにちがいない。

小生もこれまで、それなりにいろいろな日本の画家のデッサンの実物をたくさん見てきたが、その才能の豊かさということでは青木繁が一番だと思う。上の写真は元・芝川照吉コレクションにあり、今は石橋美術館に入っている青木の水彩画「丘に立つ三人」(一九〇四)である。水彩も一級品だ。ただ青木の油彩は材料をもっと研究すべき余地があったように思う。その意味でも渡欧させたかった。
by sumus_co | 2009-11-11 21:11 | 古書日録
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