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芸術家と芸術運動

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森田亀之輔『芸術家と芸術運動』(趣味叢書第十一篇、趣味叢書発行所、趣味之友社、一九一五年一〇月二五日)。森田亀之輔は一八八三年東京生まれ、東京美術学校を出てバーナード・リーチのもとで英文学・美術を学んだという。後年、金沢美術工芸大学の学長を永く勤めた。趣味叢書シリーズは黒田朋信(鵬心)が自著を中心に発行していたもの。

森田は一九一二年に「未来派宣言」を抄訳して紹介し、一五年の一月から六月にかけて『美術新報』に「泰西画界新運動の経過及びキュビスムーー附其批評」を連載しているが、その原稿(「泰西画界の最近運動」)と、「ロダンの芸術」および「彫刻界の巨人ムニエエ」をまとめたものがこの『芸術家と芸術運動』になるようだ。

マリネッティの「未来派宣言」が一九〇九年(森鴎外がすぐに日本へ紹介)、「キュビスム」の語が公式に用いられたのが一九一一年(石井柏亭がすぐに報告)、グレーズとメッツァンジェ『立体派論』が一九一二年、アポリネール『立体派の画家たち』が一三年、デア・シュトゥルム版画展(日本国内)が一四年。翌一五年には木村荘八や有島生馬らによってそれらの成果が飜訳紹介されているが、本書もその流行の最先端を行っていた一冊だと思われる。かなり性急にヨーロッパの前衛美術を日本人(白樺派が中心)が追いかけていたことがよく分かる。

実は、納涼のベンチで某氏と雑談していたら
「某店の均一、良かったやろ?」
「ええ、良かったですね、何も買わなかったですけど」
「そうか、表現主義の芸術が二冊あってな、初版と再版、アホやから二冊とも買うてもた、わっはっはは」
「……(ギョッギョッ! 表現主義の芸術? どんな本だっけ?)」
「ええ買もんできたから、今日はもう充分や、さ、帰ろ」
というような会話があった。もちろん某書店へ飛んで行きました。するとびわこのなまず先生がお一人で貼り付いてらっしゃる。やば! 先生も「ここはいいですよ」と。

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もういちど性根を据えて見直す。さきほどパスしたある本にやはり目が行くが、状態が悪過ぎて食指が動かない、動かない、動かない……おや、この黒っぽい緑の背は何かな? 森田亀之輔……尾形亀之助ならサイコーなのに、などと思いつつ頁をめくると「将棋差し(ヂュシャン作)」に「王と皇后(同上)」とか「泉の傍の舞踏(ピカビア作)」などの図版が目に入ってきた。大正四年の本でデュシャンにピカビアはかなり珍しいだろう。迷わず購入。帰宅後調べるとやはりそれなりに珍しい本だった。某氏に感謝。
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by sumus_co | 2009-08-13 21:16 | 古書日録
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