東寺のすぐそばにある京都みなみ会館で「私は猫ストーカー」を観た。
じつは先日「シネマぜんざい」20号が届いて、かの塩山御大がこの映画をバッサリ斬り捨てていたから、どんなもんやら、ハルミンさんには悪いが、かなり心配しながら出かけたのだった。
御大の感想もうなずけるところはあった。具体的には書かないけど。ただし御大の《古本屋の女房(坂井真紀)が家出する頃から、やっと画面は動き出》し《画面は緊張を帯び、登場する引き締まった猫群も、画面の上下左右に独特のリズムを》というあたりはまったく逆で、小生は家出のあたりからつまらなくなったように感じた。古本屋の主人(徳井優)がどうもしっくりこない。猫ストーカーである主人公のハル(星野真理)の生活を淡々と描いている前半の動きのない部分の方がずっと好きだ。
古本屋そのものは実際の古書店・猫額洞さんなのでリアリティばっちり。しかし主人夫妻とバイト(?)二人がずっとレジの近くにたむろしている状況はありえないだろう。だいたいバイトが二人もいるのは町の古本屋とは思えないし、もしそういう店があったとしても、それなら主人は店にはいないはずだ。坂井真紀が棚に並んでいる本の背を平手でピシャピシャと叩く(本を揃える意味か)。むろんそういう演出なのだろうが、何度もやられると気分が悪くなる。
ハルの下宿がいい。下宿の大家のおばあちゃん(麻生美代子)もいい。リンゴを持って行かないのかなと思いながら見ていると林檎を渡すシーンがあってこれはうれしかった。エプロンで受けるところもいい。ハルの部屋もなかなか凝っている。段ボール箱をたたむシーンではガムテープは使うなよ、と注意したくなった。
しかし何と言っても東京の上り下りの多い住宅街の風景がすばらしい、緑が思いのほか多いのだ。僧侶のような男はいらないと思ったが、その重厚な自転車と彼らの通った道筋は良かった。井戸も。だからこれは東京の下町が主役だと思えば見事な映画かもしれない。騒音が全編のほとんどを覆っているのも都市が主人公だと思えば悪くない演出だ。その意味では路地を抜けて周回する猫的なロードムービーと言えなくもない。ハイキーな映像もその点では一理ある。ドラマはいらなかったなあ。
京都みなみ会館、9月19日から上映開始!
http://www.rcsmovie.co.jp/