林蘊蓄斎の文画な日々
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山王書房店主関口良雄

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関口夫人より『風狂の人・山王書房店主関口良雄』(萩原茂、二〇〇九年三月三一日)を頂戴した。拙著『古本屋を怒らせる方法』(白水社、二〇〇七年)に「洲之内徹と関口良雄」を収めたことで、御手紙を頂戴したりしたことは、以前このブログにも書いたことがある。今回は萩原茂さんという方がこういう本を出されましたので、ということで、わざわざお送りくださった。感謝です。

萩原氏が《関口良雄の文学的側面に加え、上林暁、尾崎一雄、尾崎士郎、野呂邦暢との交遊についてまとめた。また、関口良雄の未亡人・洋子さんと長男の直人さんのインタビューを掲載し、「関口良雄や山王書房が登場する主な文章の一覧」も収録した》労作である。その一覧の中に岡崎武志、南陀楼綾繁、荻原魚雷、そして小生の名前も並んでいる。

掲載写真も貴重なものばかりだが、上林暁から関口宛の葉書や原稿の図版は馴れない左手で書いたその書き振りがすごい。洋子未亡人と息子さんへのインタビューもたいへん面白く読んだ。かつて三島由紀夫が店に来たことがあったそうだ。

《洋子 [略]三島由紀夫が最初に出した『花ざかりの森』が本棚に入ってたのね。三島由紀夫は「ご主人、ご主人」って言うんですよ。「ご主人、これ署名しましょうか」って言ってくれたんですよ。そしたら、「お願いします」って言うのが普通じゃないですか。それを「あっ、どっちでもいいですよ」って言うんですよ(笑)。
ー 三島相手にさすがですね。
洋子 それでも、署名はしてくれたんです。あの本とっとけばよかったと思いますけどね。そのままの値段で棚に入れちゃったんですよ、買った人は喜んだと思います。》

こういう人なんだな、関口さん。三島が山王書房に来たというのも似合わないけれど、自分の本が並んでいて、嬉しかったのだろうか。署名を申し出るとは、庄司浅水さんじゃあるまいし(庄司さんは古本屋が少しでも売りやすいように自著を見付ける度に署名していた。そのため印章も常に持ち歩いていた、実見したので、確かです)。要するに関口さんは三島を評価していなかった、それだけのことだね。

また息子の直人さんはこういう父の素晴らしい言葉を覚えている。

《「古本屋というのは確かに売れてる本、売れていない本があって、そこで商いをしていて、家族を養っていかなくちゃならない訳だし、値をつけるんだけど、自分は単に本という「もの」を扱っているのではなくて、本の中に込められた作家の魂を扱っているんだ。従って、素晴らしい作家、詩人であったりする人たちの本というのは、たとえ何年売れなかろうが、自分の店の棚に置いておきたいんだ」とそういうことを言っていたんですね。》

6月28日(日)に関口直人さんが岡崎武志氏と対談する。これは上京してでも見てみたい。が、しかしこの日は予定が既に決まっているのだ、残念至極。

第33回西荻ブックマーク
http://nishiogi-bookmark.org/2009/nbm33/

ひとつだけ、この本(というか抜刷)のタイトル「風狂の人」、関口の『銀杏子句集』に収められた俳友・川崎展宏の回想記「風狂の人」からとったのだろうが、関口さんにはふさわしくないような気がする。息子に向って《商いをしていて、家族を養っていかなくちゃならない》と言える人が風狂であるはずはない。

葉書は某氏より頂戴したもので、関口良雄の坂本一敏宛。消印は「9.8.72」。裏には一句したためられている。水上温泉での実景だと表に断り書きがある。

  夏つばめ
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by sumus_co | 2009-05-23 23:09 | おすすめ本棚
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