高橋輝次『古書往来』(みずのわ出版、二〇〇九年五月二五日)。
年明け早々には刊行できるはずが、延び延びになっていた。ようやくのことで日の目を見た。内容は創元社のサイトで連載中の「古書往来」をまとめたもの。ただし、
ttp://www.sogensha.co.jp/page03/a_rensai/rensai.html
単にまとめただけではなく、連載の原稿にかなり加筆し、というか徹底的に訂正を施し、情報としてもよりクオリティの高いものになっている。この点にこだわったみずのわ氏の穿鑿癖のため、刊行時期がずれ込んだという事情もある。そして当然ながら珍しい書影や図版も多数収録。索引も人名、書名、版元名を拾っており、今どきめったにお目にかかれない凝りようだ。
高橋輝次という希代の古本虫の目つき、手つき、足取りまで、眼前に展開するようで、ちょっと怖い、というか、これはうかうかしておれぬ、先を越されぬようにと、思わず腰が浮き、足が自然に古本屋へ向うこと間違いない。
扉野良人氏の跋文がある。そこに小生が扉野氏を高橋氏に紹介したときのことが書かれており、そういえばそうだったと、当時の光景がまざまざと甦った。よく覚えている。たしかに百万遍の古本まつりだった。門から本堂前に延びる石畳の真ん中あたり。そのとき、直前に扉野氏が手にとったが戻してしまった高見順の本を高橋さんは小脇に抱えていたそうだ。
そうだったとは知らなかったが、たしか、同じ日に加能作次郎の『処女時代』(天祐社、一九二一年)を200円で見つけたのは扉野氏だったように記憶する(その日じゃなかったか?)。とにかくそんなモーレツなブッダハンドでさえ、買いそびれたことを悔やむ(跋にまで書くような口惜しい思いをさせる)ような本をちゃっかり拾っている高橋さんである。どの頁を開いても頷いたり感心したりの連続で熱が出そう。古本インフルエンザ警戒水準フェイズ6(!)疑いなし。