またしてもやってくれましたウェッジ文庫。岩佐東一郎『書痴半代記』(ウェッジ、二〇〇九年、装丁=上野かおる)。古書目録ではときおり目にするものの、どうしても注文しきれなかった。これに限らず岩佐東一郎の本はおおむねそこそこの値段(買って買えないことはないが、少々思い切りがいる……)なので、かえって、状態が悪くても、百円で、などというスケベエ心が起ってしまうのである。そんなところに降ってきた、干天に慈雨のような、ウェッジ文庫、届いて、封を切って、立ったまま読み初めて、あれよあれよと読んでしまった。
《腰に麻縄と風呂敷をぶら下げて家を出ると、神田から水道橋を経て本郷へ足をのばし、更に白山から団子坂を下つて、上野一帯を漁ると、下手な古本屋ハダシの大風呂敷になることもある。午前から夕方まで歩いてまわるのだから下駄もすぐはき減らしてしまう。》(大震災前後)
《戦中、強制疎開を受けるまでは、約二万冊の蔵書となつた。十畳の書庫に入り切れない分は、二階やら応接間やら廊下に分散して置いたのだが、強制疎開のため、運送の便もないまま、三分の二は二束三文で売り払い、残る三分の一も戦後の食糧難のためほとんど手離してしまつたのである。》(書痴六十年)
そして手放してはまた集め直す、これぞ本当の書痴の有様だろう。また、平井功について《最上純之介というペンネームは、西条八十先生の門を叩いたからだと彼はあとで笑つていつていた。》と書いてあったのには、ハッとした。ピュアレスト・マンだろうか、などとつまらぬ推測をしていたからだ。
解説は石神井書林内堀弘さん。
《この本を読んでいると、書痴たちのおおらかな雑談に耳を傾けているような気分になる。彼らの何とも楽しげな座の余韻が、きっと行間に残っているからだ》
おっしゃる通りです。とにかく古本者の必読書也(といいながら、やっとこさ初めて読んだのは誰なるや)。
ということで久々に「qfwfqの水に流して Una pietra sopra」を読んでみたら、なんと「バンビ」の常連だったという話が書いてあった。「バンビ」名前に似合わず(といっても、どういう意味だか知らないが、ディズニーのバンビだろうね?)シブスギル中高生のたまりばだったか。
http://d.hatena.ne.jp/qfwfq/20090323/p1