林蘊蓄斎の文画な日々
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惜墨如金

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そうそう、蟲文庫でもうひとつ買ったものがあった。それは竹ペン。蟲さんのお知り合いの方が作っておられるとか。使ってみようと思って、ハタと気づいた。ボトルのインクが切れていた。むかし妻にもらった吸い込み式のモンブランを今でもときどき使っている(勝負手紙を書くときとか。ちなみに息子にはロットリングのイソグラフ0.5をもらった)。ただ、このところはステッドラーのピグメント・ライナー0.3を愛用しているので、ボトル・インクが枯れていても、困りはしなかったのだ。

所用で出かけたついでに、四条大丸の万年筆売場で、ボトルインク藍黒(ブルーブラック、bleu-noir)を買って驚いた。50mlが1600円(税別)。こんなに高かったっけ? 以前買ったのは何年前だろう。使用頻度から言ってかなりもつことは確かなので、まあいいかと思う。墨を惜しむこと金のごとし……か(意味が違う!)。帰宅してさっそく竹ペンを使ってみた。指先にクイッとくる硬さが気持いい。デッサンにも適しているかもしれない。そういえば、若い頃には、穂先が擦り切れてしまった面相筆の軸(竹)をナイフで削ってペンにしたっけな。

÷

その帰りにヨドニカ文庫まで足をのばした。五月一日から勧業館の即売会があるため、店内はきれいに片付いて本も少な目だったような気がした。吉岡実『「死児」という絵』(思潮社、一九八〇年、装幀=吉岡実)が棚にあって、ややくすんではいるが、値段も相応に安かった。吉岡のエッセイ集である。どうしようかな、と思いつつ、二三篇読んでみると、これがなかなかいいのだ。その独特な詩作品とは違った、ごくふつうの、しかも味のある随筆になっている。

《須磨の永田耕衣さんをたずねる。玄関の「金剛」の二字に驚く。不在なれど連絡つき、対面する。文通十年、敬愛やまざる人。個展の作品を拝見。どの絵も書もすばらしい。「白桃図」を予約する。四時に辞す予定が三十分すぎ、帰京の汽車の時間迫る。あわただしく白隠の一幅を見せていただき快速電車に乗る。見送る耕衣さん。記念にいただいた「おしどり図」を車中ひそかに見る。》(日記抄……一九六七)

この後「永田耕衣との出会い」(『銀花』一九七一年秋季号、永田耕衣の特集記事)が書かれるわけで、そっちは持っているが、再読する。吉岡は一九七六年に『耕衣百句』(南柯書局)を編むほど耕衣に入れ込んでいた。百円ならモチ速攻だったが、じゅうぶんに考えたすえ、買うことにした。

それで思い出した。上述した勧業館の『春の古書大即売会』目録に湯川書房の本がまとめて出ている。永田耕衣はないようだが、吉岡実『神秘的な時代の詩』(一九七四年)もあるし、車谷長吉『蜘蛛の巣』(二〇〇七年)、高柳重信『山川蝉夫句抄』(一九七七年)などが一頁に全点写真入りで並んでいる。

÷

大島なえさんより『映画批評』8号(「映画批評」編集部、二〇〇九年四月一日)を頂戴する。大島さんは緒形拳のことを追悼しておられる。「鬼畜」(野村芳太郎、1978)はたしかに凄かった。ダメ夫の緒方もよかったが、鬼妻の岩下志麻には驚かされた。寺山修司が惚れこんでいただけのことはある(?)
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by sumus_co | 2009-04-15 21:03 | 古書日録
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