おなじみの尚学堂さんの店頭。《寺町通りにおいては、今日[引用註=1976年]戦後開店した古本屋は一軒もなく、戦前からのものばかりである。最も新しい三条下ル[ママ]にある尚学堂でも、開店は昭和十二年である。この店は臨川書店でしばらく修業した子供が、現在は中心となり、父子で強力して五年ばかり前から毎月美術書中心のカタログ「尚学堂我楽多月報]を発行している。》(脇村義太郎「京洛書肆街考」)、《雑然と並べられた学術書、和本、刷物、小説、雑誌。即売会、目録も発行し、何でもある店と好評である》(全国古本屋地図1981)、《雑然と積み重ねられた中から掘り出し物を探しに来る人に向きの店》(京都古書店巡り、二〇〇〇年)。かつて生田耕作もよく姿を見せたと聞いた。細木太腹氏(拙著『古本屋を怒らせる方法』参照)とも昵懇だとか。建て替え中に旧湯川書房の北(御幸町竹屋町)の方で仮店舗を出していた。新店舗が出来、店そのものはきれいになったが、本の並べ方はまったくそれ以前と同じようなかんじだったので、一安心(?)した。
ここの平台で買っためぼしいものはだいたい紹介ずみ。これは藤井乙男(紫影。国文学者、俳人)の冊子『元禄時代の京都小説家』(明治四十四年二月二十六日講演)。藤井は淡路島出身、三高から東京帝大を出、四高、八高を経て、一九〇九年より京都帝大文科で教鞭を執った。二八年退官、名誉教授。