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芥川龍之介全集

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『好色一代男』(岩波文庫、一九二七年一〇月一〇日)に挟まれていた『芥川龍之介全集』(岩波書店、第一回配本は第四卷、一九二七年一一月三〇日発行)の広告(二つ折、タテ13.5cm、いわゆるパピヨン)。裏面には芥川比呂志、芥川文子連名の「芥川龍之介全集刊行の経緯に就て」と岩波茂雄の言葉が印刷されている。前者には「遺書」の引用がある。

《芥川龍之介全集刊行については、生前、大正十五年十月、新潮社と契約がとりかはしてありました。ところが遺書には、
「僕の作品の出版権は(若し出版するものありとせん乎)岩波茂雄氏に譲与すべし。(僕の新潮社に対する契約は破棄す。)僕は夏目先生を愛するが故に先生と出版書肆を同じうせんことを希望す。但し装幀は小穴隆一氏を煩はすことを条件とすべし。(若し岩波氏の承諾を得ざる時は既に本となれるものの外は如何なる書肆よりも出すべからず。)勿論出版する期限等は全部岩波氏に一任すべし。この問題も谷口氏の意力に待つこと多かるべし。」
 と認めてあります。よつて谷口喜作氏は、初七日の翌日、七月三十一日、新潮社に赴き折よく在社の佐藤義亮氏と面談すると、大変に潔く解約して下さいました。ただ当事者の中根駒十郎氏が不在でしたので、契約書は八月十日、霊前に供へて頂いた次第でした。
 岩波氏には八月十九日、田端で谷口氏面接、委細お頼みすると、岩波氏も大変よろこんで引受けて下さいました。
 全集刊行につきましては、死去の当時、何等かの噂も出たりして多少皆さんのお耳にも入つてゐることと存じますので、右の趣を明かにすると同時に、佐藤氏岩波氏の御好意を玆に感謝する次第であります。
  昭和二年九月 芥川比呂志/芥川文子》

ここに引用されている遺書は戦後版の全集に掲載されているのと同じ文面のようだが、二〇〇八年七月、日本近代文学館が公開した遺書は文言が少し違っており、《出版する期限等は全部岩波氏に一任すべし。この問題も谷口氏の意力に待つこと多かるべし》は省かれている(あるいは初めはなかった)。これについて「本よみうり堂」ではこう書かれている。

《遺書を寄贈された日本近代文学館の安部秀次郎・事務局長代行は「誰かが何かの意図で加筆したのか。もしかしたら寄贈された遺書は実は下書きで、全集通りの遺書が別にあり、『直ちに焼棄せよ』という芥川の遺言に従って処分された可能性もある。様々なケースが考えられ、よくわからない」と話している。》

ということは《全集通りの遺書》は所在が確認されていないのか(全集は五篇の遺書を収録)。また小穴隆一『二つの絵』(中央公論社、一九五六年)には当時の小穴のメモが載っているが、それによれば、

《ーー十九日
 岩波ノ主人ト芥川サンノ家ニテ会フ
 岩波「全集」引受承諾》

とあって、このとき、生前に岩波と芥川は一度会っただけだったため、遺族は引き受けてもらえるかどうか、心配していたようだ。そして翌二十日に小林勇が小穴に会いに来た。九月一日に全集編纂打合せの集まりが芥川家でもたれた。二日に全集事務所開き。岩波書店小売部二階の社長室が当てられた。ロダンの着彩素描(もちろん本物)がかかっていたそうだ。三日に編集費三千円の内から編集委員たち(佐々木茂索、小島政二郎、堀辰雄、葛巻義敏、小穴)は三百円を受け取って分配している。

一方、新潮社は全集を譲るかわりに『芥川龍之介集』を出すことになった。発行日は九月十二日で、全集より一月近く早い。これはよく売れたらしい。印譜も収めたコンパクトな(といってもかなり分厚い)選集だ。小生も函ナシを架蔵しているが、どこにやったのか……急ぎの役に立たないので、カナブンで検索してみると、ちょっと面白い表記を見つけた。

芥川龍之介集
著 編 者   = 芥川龍之介著
出版事項 = 東京 新潮社 1927.9.12(昭2) 
形態事項 = 6,782p 図版 20cm(四六判)
一般注記 = 著者肖像 装幀:小穴隆一

いくらなんでも「6,782p」はないだろう。と昨夜は書いたのだが、某氏にこれは前付け6pと782pの意味ではないですか、とご教示いただいた。う〜ん、そうだとしても「,」ではない区切り方にした方が誤解がないかもしれない。国会図書館は下のような記載である。採録方法の相違がうかがえて、それもまた面白い。

タイトル芥川竜之介集
出版地 東京
出版者 新潮社‖シンチョウシャ
出版年 昭和2
形態 781p 肖像 ; 19cm

ちなみに岩波文庫は芥川自殺と同じ昭和二年の七月に創刊している。
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by sumus_co | 2009-02-06 21:33 | 古書日録
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